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インタビュー

http://www.cutprintfilm.com/features/interview-don-hertzfeldt-director-of-world-of-tomorrow/ より

 

ーー『明日の世界』の声優はこの映画の中で最も強力な側面のひとつです。「エミリー・プライム」はあなたの姪っ子、大人のエミリーはアニメーション作家のジュリア・ポットが声を当てています。この配役のプランは昔からあったのでしょうか?

 

そうだね。僕の姪はたった4歳で、この作品には本当の子どもの声の録音が必要だとわかってた。カートゥーン的なサウンドエフェクトや声は使いたくなかった。大人の声優が子供を演じるのは、本当に最悪で恥ずかしい気分になるんだよ。4歳の子供との会話をでっちあげることなんてできやしない。だから、姪っ子の声を録音するのが最初のステップであり、その録音がうまくいかなかったら、そもそも『明日の世界』は成立しないと考えた。姪っ子と一週間一緒に過ごして、時折黙って彼女の声をiPadで録音した。そこから物語を組み立てていったんだ。

ジュリア・ポットのことは数年前から知っていた。実際に話したことのある人であれば、彼女が天性のコミカルなタイミングの持ち主であることを理解できる。とても愉快なんだ。実際に演技の経験があるかどうかよりも、僕としてはその方が重要だったね。彼女は本当にハマリ役だった。2日間で全部録音できてしまったよ。僕から何か特別に指示をした記憶もない。

 

ーー姪っ子の声を録音することで、彼女が実際にしゃべったことがより効果的になるように、映画の脚本が変わったという話を聞きました。

 

その通り。彼女はもちろん脚本ナシでしゃべりつづけるわけだから、映画の脚本は当然変わってしまう。でも、比較的小さな部分だよ。たとえば、彼女が「ムラサキ」としゃべる声がとてもうまく録音できたので、卵のフタをムラサキに変えたりだとか。モンスターの名前をサイモンにしたのも、彼女が路上で偶然出くわしたネコにそういう名前をつけたからだ。物語の大きな部分に影響を与えたかといえば、それはわからないね。後半、エミリーの記憶が除去されるシーンでスペクトラムの効果を入れたのは、彼女が「虹だ!」と話す声を録音できたから…まるで、ときたま狂人になる即興役者と仕事をするかのような経験だったかな。僕が語ろうとする物語とは関係のないヘンな台詞が入り込んでくるわけだから。作品のなかでうまく機能させるのは、楽しいパズルの作業になった。機能させるだけじゃなく、愉快にロジック化していくという意味で。

 

ーー本作はあなたにとってデジタルアニメーションを用いた初めての作品です。この作品を作るためにはこの方法が必要だと考えたということでしょうか?

 

そうだね。SF作品が作りたかったんだ。それがデジタル・アニメーションを試す言い訳だよ。

 

ーーアニメーション自体は愉快ですが、そのなかには落ち込むような存在論的な暗いテーマも入っています。あなたの用いるビジュアルのスタイルは、こういったシリアスな問いに向き合いやすくしていると思いますか? それとも逆に難しくしている?

 

向き合いやすくしていると思いたいね。もし困難さを増しているようなら、それは失敗しているということだから。どの作品もそうなんだけど、この棒線画のビジュアルを選んでいるのは、物語を活かしたいから。ある意味において、僕の最近の作品は、大人のための絵本のようなものなんだ。もし写真のようにリアルな3Dアニメーションでこれらの作品が作られていたら、とても耐え難いものになってしまうんじゃないかといつも思うよ。物語も音響もとても複雑だから、ビジュアルはあまり負担をかけないものになることが重要なんだ。

 

ーーこの作品の物語は短編用に構想されたのでしょうか? 長編になる可能性はなかった?

 

短編作品として構想したよ。短編は、長編に比べて多くの自由がある。企画書をプレゼンしたりしなくていいし、誰かの許可を得る必要もない。締切もないし、お金儲けをする必要もない。完成させるのにお金がかかればかかるほど、必然的に面白いものではなくなっていくものなんだ。映画祭に行って長編と短編の両方を観れば、作家たちがよりリスクを冒して境界線を押し広げようとしているのは短編の方だということがわかる。それはなぜかといえば、失うものが少ないから。短編を作り続けるのにはもうひとつの利点もある。長編だと、完成までにヘタしたら100万年くらいかかってしまうから!

 

 

ーー『明日の世界』を見終わったとき、観客はどのように感じ、何を思ってほしいと期待しますか?

 

最近よく聞かれる質問ではあるんだけど、正直なところ答えはわからないかな。僕はハッピーな作品だと思うんだけど(少なくとも僕の作品の歴史のなかでは、比較的ハッピーな方だと思う)、むしろ悲しい作品だと感じる人が多いみたいだ。その反応にも理由はあると思う。つまり、見方はたくさんある。観て興味深く感じてくれるものになっていればいいと思うよ。退屈に感じないのであれば、それでじゅうぶん。嫌いだと思われてもいいよ。少なくとも強い感情を引き起こしているわけだから。

 

ーー次作は何に取り組んでいますか?

 

時間があるときには次の作品の作画をしているよ。もう1分半くらい終わったかな。ジャグリングみたいにいくつものプロジェクトを進めてる。複数のものを同時にやるほうが僕には向いてるってことに気づいたんだ。どれが最初に完成するかはわからない。でも、次にリリースされるのは短編だと思う。短編を作るのはまだまだ楽しいからね。

 

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